通勤電車/ハルアキ
ねぼけまなこのホームには
冬の冷たい風が吹き
踏み切りの音がこだまする
カン カン カン カン ・・・
すべるように電車が止まり
倒れるように乗り込むと
発車のベルが鳴りひびく
ジリ リリ リリ リリ ・・・
蒼ざめた車両の体内は
囚人たちでひしめき合い
無機質で乾いた音がするばかり
ガタ ガタ ガタ ガタ ・・・
魂も肉体も売りわたし
社会の奴隷となるための
踏み切りいくつもくぐってゆく
カン カン カン カン ・・・
宣告を受けたものが降りていき
あわれなる囚人が新たに加わると
非情のベルが降りそそぐ
ジリ リリ リリ リリ ・・・
みんな悲しい目をしている
市場へ売られる子牛のように
荷馬車のように車体が揺れる
ガタ ガタ ガタ ガタ ・・・
自由に生きていくために
それが自分らしさだと信じて?
人間社会で生きていくために
みんな同じレールの上を走るのか?
カン カン カン カン ・・・
ジリ リリ リリ リリ ・・・
ガタ ガタ ガタ ガタ ・・・
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