アジアの純嘘/土田
こしだけ微笑みかけてくれるような気がして
そんなことを思って
ほんとうは死んではいないチョナワンとヴィセイユの
肉のかたまりをかざしてはいっしょに笑い
ひさびさに聴くカペイカ硬貨の
綿帽子のくぼみににぶく落ちる音を聞きいたあと
トリニコフといっしょにあたたかいボルシチを食べ
ほんとうは生きてはいないモハドナとガブカスに
一輪の弔花を手向けてはひとりで泣き
たびたび聴くウリミバエの
麦藁帽子にしみこんだ汗にしつこく纏わりつく音を聞きいたあと
ユゴーネといっしょにつめたい清水を飲み
そしていまぼくはそれらをありのままに
すなおに直視することができるだろう
来た
もし子供たちのピュアなハートが
弾け飛ぶ火花のように輝くというなら
愛するかぎり輝きまたたくというなら
そして誰かにめぐり会えそうな未来のほうへ流れてゆけるというなら
ぼくはこのずっと待ちわびていたモンスーンに乗り
世界地図の黄河のなかに星座早見盤のなかのすべての星座を
流れ出さないようにいびつな線でつなぎ止め沈めてやる
2007/02/14
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