ある夜の話/プル式
冬の夜小さく光る星の隙間から夕空が落ちて
いたので
拾って
帰りました
夕空はすっかりくたびれてオレンジもすっかり擦り切れて青ざめてまるで
紫の
宵っ張り
みたいです
所々に張り付いた雲は蜘蛛の巣みたいにべったりしていて
触ると
ねちゃっと
しました
持ち帰り洗ってみようとしましたが洗濯機には
入りそうも
あり
ません
お風呂に少しぬるま湯をはりそこに丁寧に夕空をつけると
足でゆっくり
踏み締め
踏み締め
じゅわり
じゅわり
と
洗いました
夕空は時折きゃらきゃらと子供の笑い声や砂糖醤油の匂いを出しましたが
踏まれる度に透明にな
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