君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
て来た悠人に向かって、そう吐いた。
 悠人は自分の耳を疑ったのだろう。私を真っ直ぐに見つめて、完全に凍りついていた。
「君がいると、本当に鬱陶しくて仕方ないの」
 これは嘘。
「大体、病院で遊びまわる感覚ってどうなの、それ?」
 これも、嘘。
「私は治療に専念したいの。ちょっと『また来てね』って言ったら、調子に乗って毎日来て。嫌々相手してやってたの、わからない?」
嘘。絶対、絶対に嘘。
「だから、もう来ないで」
 嘘。傍にいて――
 どんな反論をされてもおかしくない。子供特有の無邪気さで、どんな風に私を傷つけても、その傷を全て受け入れてやる覚悟さえあったのだ。それだけの酷い言葉
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