君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
やると、やめろよぉ、と必死に身を捩って逃げようとする。
 悠人とどうなりたいとは思わないけれど、もし誰かに訊かれたら胸を張って答えたい。「悠人は私の小さな恋人です」、と。もっとも、悠人は必死に嫌がるだろうけれど。
「ほら、さっさと作るぞ!」
 腕の中から逃れて、悠人は三羽目に取り掛かった。ちぇ、とわざと悠人に聞こえるように舌打ちしてから、私もさっき取り上げた赤い折り紙に手を伸ばした。どんな千羽鶴にも負けない、私たちだけの最強の千羽鶴を作るために。

 それからの日々は、とにかく千羽鶴作りだった。二人で作ると、なんと一人当たり五百羽という膨大な数になる。一日で十羽作っても、五十日以上かかる
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