君の背中に追いつかない/秋桜優紀
 
あ……そうかも」
「だろ?」
 悠人はほっと胸を撫で下ろして、早くも二羽目に取り掛かっていた。
悠人のその言葉に、私は驚愕を感じた。悠人はただその場凌ぎの言い訳として言ったのであろう。別に深い考えの下に言ったわけではない。しかし、そんな悠人の何気ない言葉に、私の心は強く動かされていた。
 私も病気になる前は、こんな気持ちは知らなかった。死を前にして生きる毎日が、こんなにも苦しいだなんて、思いもしなかった。
小学生のときのことだ。私のクラスには少し体の弱い子がいた。性格は明るく、優しい心根の女の子だったが、学校を休むことが多く、体育のときもほとんど見学をしていた。球技のときなんかは良いが、
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