洋燈ノ声 ー異人館にて ? ー /服部 剛
 
陽も暮れかけた十七時前 
山手八番館内の 
洋室のソファーに腰を下ろし 
レースの白いカーテン越しに 
神戸の海を見ていた 

開いたドアの外から 
ふこやかな顔で瞳を閉じて 
独り坐る仏像が 
僕を観ていた 

腰を上げて 
ドアの外から微笑みかける 
仏の前に僕は屈んで 
旅先で独り酔っ払い
放蕩者だった
昨夜を詫びるように 
両手を合わせた 

ぎしぎしと階段を踏み鳴らし 
職員のおばさんが 
閉館の時刻を知らせに来た 

「 そういえば・・・震災の時は 
  大丈夫だったんですか・・・? 」 


[次のページ]
戻る   Point(1)