剛毛/サトタロ
職人が汗まみれで作り上げる見事なかつらを頭にのせたギトギト脂ぎった中年の親父たちが海豚の背びれを掴んで海の彼方に消え去って行く時の潔さを若くして備えた小学生が初めて同級生たちに水着姿を披露する時の恥ずかしさにも似た感情に振り回されている大学生が暑さに耐えかねて冷凍庫の氷をむさぼり食べる時の頭痛ほどは辛くないあの教科書の偉人たちの小言についての態度を明らかにしない不誠実な政治家の卵を応援する地元の名士の名刺入れに潜んでいた百足の足の数より多い悲鳴を聞いたことのある看護士が一人暮らししている賃貸住宅近くの公園で野宿している谷沢さんが気にしている脇毛剛毛
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