ミッシング/松本 卓也
駅から宿に向かう道の両脇に
悪趣味な電飾に彩られた街路樹が
等間隔に我が身を嘆いていた
不自然に丈の短いスカートを履く
太い足の女達と何度すれ違っても
何を誘っているのか分かりやしない
やり場のない目を伏せると
雀が仰向けに落ちていて
小刻みに震えているけれど
そ知らぬ顔で目的地に向かう
自らの薄情さを嘆いてみるだけの
いやらしい余裕に苦笑い
こんなにも寒々しかっただろうか
ほんの何年か前まで
夢や愛を歌う群像の一人として
佇んでいた橋の上は
排気ガスとエンジン音
途切れる事無く続くばかりで
懐かしい酔っ払いの怒号も聞こえやしない
冷めていく心に呼応して
腹の底から痛みがこみ上げる
また一つ帰る場所を無くした
そんな手土産を抱えた現実が
たまらなくおかしくて
笑うに笑えないまま
誰をも映さないように
溜息をこぼさないように
決して振り向かないように
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