あけおめ/木屋 亞万
 
へぇ、そぅ」と無関心に答えながら
腹の底では「明雄め」と怒りを募らせていた

しかし高校に入った頃私は見てしまったのだ
部活の友達と初詣に行った帰りだった
わが家の郵便受けを物色する明雄の姿を見つけた
彼は郵便受けの道路側の投入口から太い指を
不器用に動かしながら年賀状を押し込んでいた
明雄が上に来るのは偶然ではなかったのだ
私は「明雄め」と少し彼を可愛く感じた

明雄が私より先に大学合格を決めた年には
上から目線の年賀状の文面に「明雄め」と悔しがったし
私が先に製薬会社の事務に就職が決まったときは
大学院に進むあいつを世間知らずの「明雄め」と
新年早々馬鹿にした

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