釣り/K.SATO
 

ビャーっと貫く夜の 闇の中へ懐中電灯
透明にすかしたラインを スイベルに通し
リールをガチリと巻き取ると ふっと一息
でも足を立て 振ったロッドで もう一投

光が差し
床を やがて11時の足先に行く
遠い麓の山から 昔の僕に降りてくる 風
でもザラザラ
僕の皮は ザラザラの皮膚炎の記憶を
宿している

きらきら・きらめくミノープラグが
こごえる思いの
夢の中 らきらき・とスティックの たゆたいの中に落ちていく

僕は 山を見る子供だった
かぶさった瞼を でも あの日 目や
見えた景色に抱いた けれど今日も 目
光だけの空っぽの頭

チャプリ、チャプリ
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