幻灯/狸亭
 
隔離された仄赫い闇に影二つ。
兄妹のようにも見え恋人のようで
単なる友いや仇敵の頭骸骨。
何故どうして一緒にいるのかあくまで

秘密のようだ。だあれも知らない三月。
それぞれの幻灯をもっている二人よ
まだ映しだされていない思いを穿つ
この地上にただ二人の恋の隠り世。

いかにも愛しあう者らしい親密な
顔たちは一つの未来を待っているが
映像があらわれると胸いたむ刹那
色彩の乱舞の美しいパステル画。

群るまぼろしの豊富輝かしい絵。
生々しくあたらしいまぼろしの広い
逆流する胎内の重い費え。
かぎりない鏡の反射にもかぎろい

まぼろしとまぼろしのよせてはかえす波
[次のページ]
戻る   Point(1)