不安な航海/kauzak
僕らの乗った客船は軋みながらも
概ね順調に航海をしている筈だった
海は時化ていて甲板には
出られないけれど
船の中に必要なものは揃っていたから
退屈はしなかったし
取りあえずは安全/安心は護られていた
(少なくとも後続の客船よりは)
けれど変なウワサが客室内に流布しだした
操舵室内で船員同士が対立している
激しい対立で操舵放棄の状態らしい
羅針盤も壊れてしまっているらしい
この客船は堅牢であまりに大型だから
この時化で揺れが大きくなりはしたが
(その揺れに不安を示す人も現れ出したが)
羅針盤を失ってその上まともに操舵しなくとも
流されるまま波間を漂
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