忘却プロトコル/塔野夏子
 
てあらわれる
けれどその中に
迷い込ませてはくださらない

塔の先端に
据えられた地球
さらにその上に腰かけて
笛吹きは夜通し 笛を吹くのです
巨大な歯車が軋む夜空へ

どうしてだかわかりません
紅い薔薇と銀の閃光の引力とで
とめどなく歪んでゆく多重時空から
純粋遊離線を抽出しようとしているだけなのに

忘れ去られた白い窓が
夜明けにひとりでに開いたら
誰かが 何かを告げに
訪れるのかもしれません



個人サイト「Tower117」掲載




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