忘却プロトコル/塔野夏子
中空の細い運河を
小さな郵便船が遡ってゆきます
あれには僕の手紙も乗っている筈です
誰に書いたのか 何を書いたのか
とうに忘れてしまいましたけれど
ひんやりとした透明な砂漠を
彷徨っていたら
蒼の族に会ったのです
その瞳は
何処を見ているかわからない深さでした
黒い空にくっきりと浮かびあがる
枯れた山脈の上を飛び越えてゆくのは
虹色の翼をつけた
骸骨の一隊です
境界線上をブレ続けることは
楽なことではなくて
こんなにも手ひどく傷んでしまいましたけれど
万華鏡も 観覧車も
回りやめることはないのです
貴方はいつも
背後に不思議な森をたずさえてあ
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