「不思議の国のアリス」に尽いて 〜児玉あゆみ・覚書〜 /服部 剛
 

もし自分自身が光ると本当に信じることさえできれば、
ありきたりだった日々の物語は輝きを帯び始めるかもし
れない。 

 そして、彼女が人として、詩人として、本当に求めて
いるものは、人間の最もシンプルな言葉「ただいま」と
「おかえり」の間に湯気のように立ち昇るような、暖か
い愛と幸福なのかもしれない。 

 詩の最後に「さよなら」と小さく呟いた一言は、アリ
スを演じていた詩人が新たな物語へと踏み出す決意の言
葉である。これからの人生の旅路で、益々輝きを帯びる
であろう詩人の魂が「この世という不思議の国」で一体
何を見出し、どのような物語を描き、彼女の詩を待つ地
上の誰かに詩を通じて何を伝えるであろうか。

 児玉あゆみという詩人の心の夜空にはシリウスの如き
星が宿っている。哀しみを越えて力強く光るその星は、
決して消えることなく、人の心の夜空に灯り、これから
輝きを増すであろう。 







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