R305/木屋 亞万
頭が九つある竜の川の河口を抜けて
地図で見れば尾びれのような東尋坊に
ガス欠間近のバイクを止める
どこかの船越に追い詰められた犯人が
たどりつきそうな見事な崖だ
ドラマではほとんどの犯人が泣き崩れてしまうけれど
実際はそんな風にいかないみたいで
電話ボックスに積まれた10円が、テレフォンカードが
説得の看板が、ここは自殺の名所です
と、連なっている
私は別に船越に追い詰められてここに来たわけじゃない
色んなことが崖っぷちではあるけれど
人殺しやら強盗やら、法に触れるようなことは一切していない
だから観光客に混じって悠々と崖を眺める
人生のうち一人につき三
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