偉大なる詩人の歌/atsuchan69
 
冬枯れの木立のつづく泥濘の道、
小さな水溜りに爽やかな青空を映して
名も知れぬ誰かの、
虚しく残した懸命な足跡を
突然、山の麓から軋む音ともに登ってきた
四角張った黄色い一匹の獣が、
鋼鉄の履帯で靴底の標(しるべ)を
いとも簡単に踏みつぶした

この俺は、
とうに死にかけていたが
あいにく首を吊る
つよく逞しい枝がない

現場監督の話では
この場所にビルを建てるのだという
俺は濃紺のカストロコートを着て
皆と外れて、かなり遅い昼飯を食べた

保温のため新聞紙で包んだ弁当は、
鶏の唐揚げと、厚焼き玉子と、筑前煮と
エビフライと、蒲鉾と、黒豆と、
志波漬けと
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