午後十一時のワルツ/結城 森士
[午後十一時のワルツ]
寝室で目が覚めると同時に
刺激のある独特な匂いが
鼻腔を貫いた
赤錆と冷たい鋼鉄の感触
血液の味と
やがて眩暈
秒針が円形を描くように
規則的なメトロノームは脈を打つ
何者か
近づいてきては
また去っていく
1.
再度目を開く。
ぼんやりと曇った意識の中、身体を起こし部屋を出る。家の明かりは全て消えており、家具の輪郭以外は何も見えない。リビングの照明を一つだけ点けると、自分の暗い影が僅かに硝子窓に映っている。
レースのカーテンの裏、シルエットは笑っているだろうか。
/ひっくり返ったお
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