スウィートミュージックは、時々、熱くなる。/木屋 亞万
 
し込んでいく、夕暮れのように温かい
砕けて、溶けて、泡だらけのオレンジゼリー



 炬燵机にペンを置き、仰向けに倒れる
 明るい詩を書いても、骨の黒ずみが取れなくなってきていた

 あー、と漏れる声、脱力と退屈と憂鬱の混ざり合った
 中年親父の産声、足元の炬燵が熱くなりすぎている

 炬燵の左サイドで昼寝中の妻が、イーシと言う
 右サイドに足を突っ込む娘が、テールーと継ぐ
 
 るるるるーううー、ねーどーしてー
 と妻と娘が乗ってきて
 LOVELOVELOVEを叫んでいく

 
 全身が熱くなってきたので
 ゼリーのゼラチンが溶けてしまい
 灰色だった骨が、青色だった血液が
 オレンジ色に染まっていく
 目頭まで熱くなってしまって
 (蜜柑の皮の汁が、目に入ったせいにしたけれど)
 憂鬱な凝りが、歌声の中に流れていった気がした

戻る   Point(1)