スウィートミュージックは、時々、熱くなる。/木屋 亞万
し込んでいく、夕暮れのように温かい
砕けて、溶けて、泡だらけのオレンジゼリー
炬燵机にペンを置き、仰向けに倒れる
明るい詩を書いても、骨の黒ずみが取れなくなってきていた
あー、と漏れる声、脱力と退屈と憂鬱の混ざり合った
中年親父の産声、足元の炬燵が熱くなりすぎている
炬燵の左サイドで昼寝中の妻が、イーシと言う
右サイドに足を突っ込む娘が、テールーと継ぐ
るるるるーううー、ねーどーしてー
と妻と娘が乗ってきて
LOVELOVELOVEを叫んでいく
全身が熱くなってきたので
ゼリーのゼラチンが溶けてしまい
灰色だった骨が、青色だった血液が
オレンジ色に染まっていく
目頭まで熱くなってしまって
(蜜柑の皮の汁が、目に入ったせいにしたけれど)
憂鬱な凝りが、歌声の中に流れていった気がした
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