綺麗なお姉さんは好きですよ/木屋 亞万
 


綺麗なお姉さんは好きですか
触りたいですか、群れの中でも
見知らぬけれど袖の触れ合った女性を
ああそれならば、この車両には欲望の野獣がいます

冬というのは寂しいものです
身体から温もりが抜け落ちて
風がするすると通り抜けます
骨に隙間があることを
服を着ている人間は知らないのです

綺麗なお姉さんは好きですよ
でも、僕は触りません
ただ薄汚れた車内の暖房の中で
外の透度に憧れるだけです
僕の本能はもう、黒い残骸でしかありません
十数年前の冬を、越せていないままですから

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