地下鉄/高橋正英
 
電車に乗るどこかに連れて行かれる
たしかに
どこかに連れて行かれる電車には
ひどい恐怖があるとくに
闇の
なかを走り続ける地下鉄の
なかの蛍光灯
にぽっかりと照らしだされた人たちが
何もないようにすっ立っている
何もないように話に首を埋めている
何もないように音楽を聞き何もないように
眠りに落ちている
ひとつの一瞬が
暗闇のなかを黙々と走っている塊となり
それらはうるみひかり
点をてんてんと結んでゆく
さみしさが
恐ろしく
どこへ行くのだろうと
これらをどこへ連れて行くのだろうと
振りかえれば闇ばかりで
明るいのはここだけで
それでも黙々とただ
もくもくと音もたてず
煙も上げず
ひかりの塊を引き連れて行く
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