はるかなるわがスターリング・ノース/海里
およそ何か得物があって
ましてや紙とペンとインクがあって
何かしでかさないアライグマはいない
ラスカルだって機会さえあったなら
本の一冊や二冊
モノにしていたはずではないかと思う
手型文字であれ鼻面押し当て文字であれ
内容は勿論
彼を育ててくれた男の子のこと
苺ソーダを一緒に飲んだ少年
また会いたいとか
今どうしているだろうとか
アライグマだから
言葉で思い出すことはなくても
彼のことずっと覚えていたと思うので
少年のほうでもラスカルのこと
大人になっても
中年過ぎても忘れなかったように
ラスカルもまた少年のことを
森にかえっても
お嫁さんをもらっても
ずっとずっと忘れなかったと思うので
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