香る/かんな
 
後は
仲間とだべりつつ
トランプをした
ひと息ついて
ひとりになりたい時は
図書室へいった
そして本の海を泳いで回った
そんなレールにのったような
歩き方するわたしが
わたしを嫌いじゃなかった

夜が好きだった
夜中の二時、三時に
部屋の窓から軽く飛び降りて
家を抜け出す
そうして
海まで歩いて
煙草を一本吸って
ぼんやり
携帯画面と
星を
交互に眺めてから
またきた道を
何も考えず
とぼとぼと歩いて帰った
そんな
親や世の中に
ほんの少し逆らうような
ベタなことをするわたしが
わたしを好きだった

ふりかえれば今も
懐かしく香る
わたしという矛盾


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