老人と詩と/杠いうれ
 
は鉛と化す
目覚めているとき堪えられるよう わるいゆめを

せせらぎは遠くなる


――夜には車輪の慟哭がしゃしゃり出てくる、せめて未明に――


しずかに

羊が歩くゆめ
銅の羊だ
ちいさい、彼女の手の平にも乗るくらいの
その手で紫の花を摘んでおいで
すまないね、この部屋には花瓶すらないけれど
アイスクリームをあげよう
ピンク色の
苺? ソルダム? いずれにせよ甘い何かだ
若い娘さんよ
たくさんの詩(うた)を胸に抱えて
羊を連れてゆく
羊は唄う
穏やかな歩み
歩み、



柔らかなどぶのせせらぎ
陽と影を受け
窓から舞い落ちた 手垢だらけの紙

あの子が 追って来れなくなるまで




戻る   Point(2)