鈴実酒/木立 悟
 


さようなら波
めぐりくる波
朝の原と昼の原
境いめの道に
鳴りわたる鈴



かき傷だらけの明るい日
光の化粧をした光
両手を緑に染めながら
腕ひらく子の歩む道



底の在り処を示す泡
赤い実の酒に沈む鈴
もうひとつの鈴に触れては歌う
水のたどった径を歌う



( くちびるに なにかが 触れている
  首をふり はなしても はなれずに
  くちびるに なにかが 触れている )



陽ざし色の実は揺れて
静かに水を待っている
鈴を手にした子らは皆
祭を待ちきれずに駆けてゆく
こぼれた鈴のいくつかが
午後の日陰に鳴りわたる



さようなら夏
めぐりくる夏
 



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