願い/いのせんと
 

それは、
月の輝く夜ではなく
夕日の下でした

影は長く惰性的に伸びるだけの
夕暮れでした

鳥は何処へ行くのかさえわからない様で
ただ、ただ
東へと、西へと風を読み向かうように
見えました

目で追うだけの私は
ほぅ、と白く息を吐き
流れていく時間を手のひらに
閉じ込めたりもしました

夜が東から這い出てくるから
闇に飲み込まれてしまう前に、君が
振り向いてくれることを
小さく、願っていて

私の乾いてしまった唇に
そっと触れて
温もりを回帰させては
くれないの?

ほら、もうすぐ夜の闇は
君を飲み込んでしまって
もう、困ったように笑う顔も
見えなくなります

私の涙も
君には、見えないままです


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