ヨトギ/木屋 亞万
わずかな隙間から
汚れた水を流していく
濁った水は早く捨てないと
お米が吸ってしまうのと彼女は言う
あなたの変な趣味には付き合っていられないと
作業を熱心に眺めるぼくを尻目に
彼女は炊飯器にご飯を仕掛ける
彼女の研いだご飯は香り立つように甘い
ぼくは世界中のどの男よりも
この米に嫉妬し、自分もこのひと粒になりたいと思う
願わくは指の隙間から零れ落ちて
彼女の指に摘んでもらえる
ひと粒になりたい
ちなみにその前は洗濯機で激しく回され
乱暴に揉まれ、冷水と泡を浴びせられる
洗濯物にも憧れていた
願わくは彼女のTシャツになりたかった
彼女はぼくを変態だと笑って
どうして恋人になりたいと素直に言えないの
と、静かにぼくを洗い流した
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