ヨトギ/木屋 亞万
 
彼女の手の平が押し出す白濁が
指の隙間から流れていく
少し力を込めた腕の強張りに
持ち上がる頬が顔立ちを整えていく
束ねてもらえなかった前髪が
目の鋭さを扇情的に遮っては見せ付ける

もっとゆっくりやってよと
ぼくが言うのだけれど彼女は
それではダメだというので
いつも僕のしあわせは
一瞬の白濁の中に流れ去ってしまう

だから僕は苦し紛れに
何度も何度もおかわりをして
胃がイカ飯になるくらい
白濁の半消化物で内臓を満たす

5時を過ぎて辺りが暗くなり始める頃
台所の蛍光灯をつけて、彼女は米を研ぐ
柔らかい手の平で
コツコツとした甲を押し広げ
細い指のわず
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