段差のない家/木屋 亞万
 

どこかの山の頂で先生と奥さんが肩を組んで、にこやかに写っている写真だった
「これが、主人の最後の笑顔よ」
と呟いた奥さんの憂鬱を吹き飛ばすような、軽やかなクラクションに呼ばれ
私たちは玄関へと向かう

「あなたも、うちの主人を尻に敷いてみる?私道だから免許がなくても平気よ」
と、明るく笑う奥さんと先生に乗り込む
エンジンを好きなだけ吹かして私たちは、段差のない家を最高速度で駆けていく

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