グッバイ・ブラック・ライダー/ホロウ・シカエルボク
 
した音にはみんな自然に耳を澄ませるから
誰が弾いているんだろう、誰が弾いているんだろう、俺は記憶の中をしばし彷徨った、俺の為にそれを奏でてくれるやつのことを探そうとして…結局そんなやつはどこにも居なかったことに気づいた、思うにそれは誰か俺の知らないやつが弾いているんだ
正真正銘の優しさってやつはつまりは他人事なのさ

ロシア!ロシア!ロシアの歌声が聞こえる、どうしてそんな風に海を越えてくる、縁もゆかりもないこの俺のもとに?凍てついた石畳の街路、終末の予感のように立ち上るカフェの珈琲の湯気…何もかもを諦めた淫売のため息
袋小路の行き止まりで頭を撃ち抜かれた黒光りするドーベルマンのシェイドさ
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