正気/砂木
 
たらお金を貯めて
詩集を作ろうと頑張った そして作った
十代 二十代
結婚してもやめなかった 諦めなかったけど
三十代になって やめたつもりだった
一作も書けなくなって
ただ なつかしいと 詩の世界からの便りを
ただなつかしいと 思うだけだったのに
結局 詩にしか言えないことがある私
詩人になりたいと詩人になりたくないは
いつも五分と五分で
絶対に詩の世界には支配されないと思いつつ
またしても ひざまづいてしまう私
三十年以上たっても求めてしまう
私一人のものでもないくせに
詩とはほんとに いいきなものだ
のんきで

すっかりと落ち込んで動けない朝
正気で私は思う

こい 詩魂

右手の中に詩魂があふれるいめーじがひろがる
やがて私の身体に 詩魂が湧き上がって
ふつふつと よし 稼ごうという気力があふれるのだ

いたって正気だが
詩人に変身は 勿論しない



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