とりあえず、嘘/猫のひたい撫でるたま子
 
方眼紙を見すぎてこんなことを考える。

真っ白な原稿用紙のマス目を歩いてゆくのが生活だと仮定して、その淵に立ったときに「とりあえず」と大声で叫ぶと、オセロみたいに白いマス目が黒にひっくり返る。まばらな黒いとこだけを飛び石みたいに踏んでゆくと、白か黒か曖昧なマス目が現われる。そこを指差して、嘘、と言うと、そこが嘘でも本当でもマス目が落下する。嘘、と言い過ぎると道がなくなってしまう。先ばかり見ていると踏み外す。とりあえず、とりあえず、と言いながら歩いて今夜の夕飯と今晩の布団があるのはラッキーなのかもしれない。


うちの近所には夕方すぎに路上でトランプをしているおじさんたちが沢山いるので、朝になると外れ万馬券のごとくトランプが散乱している。

裏っかえしになってるトランプを踏んで、嘘、と言うのが最近のどうでもいい楽しみごとです。


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