いつかおまえの胸もとに流れた歌のことを思い出す/ホロウ・シカエルボク
とを知る
おまえの胸もとに流れた歌のことを初めて思い返した時
それはこの世に存在するどんな種類の哀しみよりも報われないものに思えた
暖めるすべを手に入れることが出来たとしても
悔恨のようにぽつぽつと降り積もる雪の冷たさは心から出て行きはしない
ハミングでメロディをたどろうとしたけれど
俺が聞きたかったものはそんなものじゃないと気づくまでにいくつもの夜明けを見つめなければならなかった
過去になってしまうのかい、過去になってしまうのか、あの安らかな時間は二度と寄り添うことはないのかい、気まぐれな太陽が雪の向こうから顔を覗かせる、降りやまぬ結晶たちがその光を受けて…美しさなど今は認めさせないでおくれ、俺はカーテンを閉じて偽りの暗闇の中に沈む
いつかおまえの胸もとに流れた歌のことを思い出す、それは決まって俺を眠れなくさせる
もう一度新しい春が来るとき
そのメロディの忘却を願うことが俺に出来るだろうか
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