いつかおまえの胸もとに流れた歌のことを思い出す/ホロウ・シカエルボク
いつかおまえの胸もとに流れた歌のことを思い出す、たとえばとある冬の
心まで凍てつくような寒い寒い夜中のこと
くすぶるだけのストーブ、空っぽのキッチン、それでも
あの時おまえの胸もとに流れていた甘く暖かい歌
長椅子で寄り添ったら失うばかりの暮らしもまんざらじゃないと本気でそう思えた
いつかおまえの胸もとに流れた歌のことを思い出す、たとえばとある春の
堤防沿いの道で季節外れのスコールに濡れていた午後のこと
その日も俺たちは放り出された犬のように飢えてばかりいて
いつから着ていたのか判らないくらい擦り切れた服を着ていた
そして明日には希望のひと
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