シュヴェーベ/杠いうれ
六月の空だったろう、と耳の後ろが云う
否 冬だったろう、ひんやりと肌が伝える
カルキ水に浮いていた
たちこめていたのか?
彼の頭頂部に咲きこぼれたという 青い花を思っていた
遠くで子供たちのはしゃぐのが ホットケーキが焼けるのに似て
しかし甘やかなものは皆無だ
巡る茎、棘、葉脈を ついばんだものか、もう
清潔な部屋
窓はすべて開け放たれ
たくさんの本が 思いたったように羽ばたいてゆく
六月の空か、冬
鳥は飛ぶのではなく、浮いているのだ と
けれど本は羽ばたき 崇高なものでもあるかのように 高く
取り残された
たちこめていたのだ
触れないままに向かい合い
その日は不思議に理屈が気になっていた
何を養分に彼の花が育めたものかと
青い花弁が頬に漂着し
そして群飛を外れた本がひとつ、ふたつ、
ちいさな湖にしずかに降り立つ
青は次から次と咲いてみせ、自らの重みで首をもたげる
ただ佇む 彼を敬い、葬るように
窓はすべて開け放たれていた
六月の空か、冬
カルキ水に浮いていた
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