季夏〜かなしみの終わりに〜/望月 ゆき
 
夜半の網戸に
数回、アブラゼミは体当たりをし
ジジジッと最期を知らせた
アブラゼミも網戸もぼくも
誰も悪くはないよ

 かなしみは 今、

いつかの記念日の時計
いつかの8時を告げたまま
それが朝でも
それが夜でも
ぼくは多分ひとりだったろう

 かなしみは 今、

シャツが濡れている
肩と、ひじと、背中と
思いもかけないことって、ある
夕立ならよかった
降ってきたものが
ただの雨粒だったなら

 かなしみは 今、

目を閉じる砂の上
もうじき、花火があがったら
照らされてしまう
後ろ手に隠していたものも
ぜんぶ ぜんぶ
そうしてそこが

 かなしみは 今、どこらへん?

終点ならば、泣いてもいいよ。




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