一日の終わりまたははじまり/佐々宝砂
露に濡れた車の窓に
髪のあとがうっすらとあって
遠くもない思い出をちくちく突く
真冬の明け方は思いの外冷えもせず
終わると思った恋は終わりもせず
まだ暗い南の空にカラス座
不幸のヒロインになる方法を知らないので
車窓を開けて仰向けば
春の星がやわらかに光り三角にならぶ
ひとが生きるあいだ
あの星たちは飽きもせず三角にならぶだろう
カラス座の帆も
きっとぴんと張られたままだろう
バカバカしいくらい明るいロックンロールかけて
このまま出かけよう
南に向かって
浜辺につくころ
空はすっかり明るくなって
春の三角もカラス座もみえなくなって
すがすがしいほどなにもない空の下
冬の朝の妙に凪いだ海
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