予告篇/千波 一也
毛布になついた匂いをかぐと
やさしくおもえる十二月
ふゆという名のまぼろしが
ふたりのあいだに
許される
つめたい風のひとひらは
ぬくもりひらく
手のための
はな
くすぐりに似た
意味たちのそこ
あした目覚めたら
どちらが先にほほえむだろう
だれにもよまれない
ひそかなしずかな小節は
よぞらをのぼる
とうめいな鳥
だれかのはるを
ほしに告ぐ
眠りのまぎわにおもいだす
なつかしいままの恥じらいは
ふたりのための
優しいとびら
そらからきこえる無数の白は
ふたりのための
予告篇
まぶたのうらに見るものを
だれもがたやすく忘れるように
染まりゆかないはじまりを
つとめてながい十二月
純白になるみちすじが
ふたりのあいだに
降りつもる
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