父発狂/三州生桑
殺したのである。父は犬の代はりに、銀色の猪を連れてゐた。猪は無毛で、皮膚が銀色に輝いてゐる。
父の表情は穏やかだった。発狂したのだと思ひ至ると、私は途方に暮れた。警察に通報するべきか、救急車を呼ぶべきか? とりあへず私は父の手を縛り、車の後部座席に押し込んだ。父は、温和な表情のまま、絶叫し始める。
「馬鹿にしくさってからに!」
私は父の顔面を殴りつけた。歯が折れても、父の表情は優しかった。
「あの娘はお前の妹やど!」
http://www.h4.dion.ne.jp/〜utabook/
戻る 編 削 Point(0)