夏子のダウンジャケット/サトタロ
夏子が中学生だったとき
気になっていた同級生の男の子と
二人きりで映画を見に行くことになった
男の子が誘ってくれたのだ
そのころダウンジャケットがとても流行っていて
夏子もダウンジャケットを着ていきたいと思った
ただダウンジャケットは当時高価で
若者によるダウンジャケット狩りが問題となっているほどで
(余談ではあるがしばらくしてからは逆ダウンジャケット狩りが問題になった)
中学生夏子の手の届くものではなかった
母親に一応ねだってはみたものの
返答は夏子の予想通りで
洗い物をする母の後ろ姿が
ちかちかと明滅する蛍光灯に照らし出されていた
「デート」を明日に控え
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