彼は少年だった/ヨルノテガム
書き起こすべき信頼できる白い紙が要った ペン先も
尖らせる紙でなく 存在感の無い筆が進まねば
と 作者は目を閉じた
身軽に 身軽な 子供の歩みを
憶えている所から深く探り出して
一瞬を永い感触に掴み取り上げる心を 持ちたい
小学校帰りの急な坂道
をランドセルごとジャンプして駆け下りる
一歩がいつもの倍の距離に
急ぐ理由はあったのか無かったのか
なぜあんなに走っていたのだろう
蹴り出した空中の時間が快感だった
彼のバネは良く効いた
全て新しい呼吸で新しい血の巡り
大人の彼は跳べない 跳べない
一瞬を掴み切れない
呼吸が元に戻らない
新しい 新
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