笑い男/aidanico
 
った息が漏れる
ぴいいんとはった
冷たい空気を揺らすために

暖かい国から流れ着いたのだと言う
おさげの少女と
獰猛な中に安らぎを秘めた
旧知の友と
音階を持った言葉を喋る
少しばかり陽気な友人と

ぼろを纏った
笑い男、
下に縫うように走る
混凝土に
眼を落として
今も明日も
変わらないと確信し、



バスは止まる
物語の最後を
決して語ることなく
若い男女が
結ばれて、解けるのを
見届ける代わりに

―――「おい、お前、物語の最初は必要ないのかい」 

そんな物は
幾つも転がっている
コートに身を包む人の群れの中に
老人から餌を摘む鳩の群れの中に

物語の最初は
幾つでも、



戻る   Point(0)