笑い男/aidanico
 
脆弱にも映るその青年は話を始めるタイミングと言うものを実によく心得ていた。特に聞き分けの無い小さな友人たちにおいては、その尊敬を二時間にして勝ち得るほどの能力を惜しむことなく発揮した。それでいて気取るでもなく、威張るでもなく、眼差しを細めて諭すような視線をバックミラーに写しているのだ。彼は幾つもある小さな友人たちへの話中から慎重に(しかしそれを悟られないよう瞬時に)感知して、今日も「笑い男」の話を生き生きと始める。



深い海の青に彩られた
爪先を通り越し
その視線は薄い桃色の
花びらを通して
地平を見下ろす

磔刑に為ったのは偶然ではない
丸く膨らんだ鼻から
籠もった
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