球体/aidanico
 

落ち葉に溶け込むのを
内側から
視界の開けてゆくのを見る



鴎、
広々と翼を広げ
潮の香りのする海を
飛び交う
警笛が
聞える、遠くから
旋廻せよと
言うでもなく
戻ってこいよと
言うでもなく
腹の白と雲の境界線を
知らないのに



深緑の苔の覆う沼から
両足を這い出し
近づくのだか
接吻するように
首に回る
黄色いびいだまの視線は
転がる
前に
ゆっくりと



お前よ、
何を泣く

象の眼が老人のように優しいのを知っているか
猿の尻が恥しさに赤いのを知っているか
鳥が嬉しそうに騒ぐのを知っているか
蛙が声を合せて歌うのを知っているか

お前よ、
何を泣く

この地平を
仰いでも、
仰ぎきれないのに



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