きれいなうろこ/千波 一也
 


とうの昔に
ほろびていたのかも知れない

ほろびという言葉は



まっすぐに立ち上がること

それを叶えた
わずかなものたちのいどころを
陸とよぶ

だから
陸にうまれたことが
なにかを約束するわけでは
けっしてない



ゆうやけがすきだ

しかも
ときどき
こわくなるから
日をおうごとに嘘つきになる



あらためて
帰りたいところを尋ねられると
こたえに困ってしまう

うっすらと
みずの匂いにとけこんで



このまますなおに
古びていけるものだろうか

きれいな傷ばかりに
こがれていても



明日あたり
そらが降りつもりそうだ

すべての呼吸の海となるため
いちまい
いちまい








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