■千羽鶴/千波 一也
わたしの母が病に倒れたとき、
もう、
何年も昔のことだけど
わたしの母が病に倒れたとき、
わたしの
不安や曇りや
行き場のない怒りを
おまえはどんな思いで聞いていただろう
妻ではないし
血を分けた間柄でもない
お互いに、
何を預ければいいのか
何を受けとめればいいのか
わからずにいた気がする
けれど
慕っていたのは確かであるから、
おまえには
おまえなりの
悲しみがあっただろう
水底があっただろう
しばらくしておまえは
千羽鶴をくれた
不器用なくせに、
不器用なくせに、
千羽鶴を折ってくれた
大切そう
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