巴旦杏洋菓子/木屋 亞万
アーモンドチョコレートを一粒
光沢のある爪先ほどの球体
歯が食い込んでいく表層、とろけて
わずかに硬いアーモンドは
乾いているのでカリッと割れる
砕けた粒が乾燥地帯の匂いを呼んで
アーモンドの縞々の表皮の一部が
舌に絡みつきながら、奥歯に砕かれていく
その間にもチョコは解け続け
濃厚で甘い粘液となって
頬の裏を艶めかしく攻めてくる
そのしつこさを淡白に流してしまいたくなり
一杯の蛋白な牛乳を口に含んでしまう
くせのある乳臭い草原が
乾燥を孕んだ熱帯雨林を洗い去る
途端にチョコのしつこさと
アーモンドの乾きが恋しくなって
もう一粒を求めて
赤い箱をスライド
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