幽食/ヨルノテガム
 

幽霊が豆腐を食べる
冷や奴より冷えた幽霊の
行儀の良いイタダキマスの
青白さを競う口元の
豆腐の角ばった立方体への怖れと、味わいの
幽霊声は、静かに しょう油派?
ポン酢派? をうらめし、たずねる素振りの

口がうまく開かないわ と
目もよく見えないわ と
豆腐の水っ気が吸われて
今日から お豆腐さん と呼んでと
また来る気でいるやら、一丁、二丁、三丁、
絹だの木綿だのそれよりも、崩れ崩れ壊れ落ちる柔らかさに
どこかが キュン とするんだと。
何度も崩しては
食べれないの、とおから風に弱っていき、
元気なんてあったかしら、
我に返ったり、自己の紹介をぼんやり
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