末摘花/
 

末摘花


何が、愛されたのだろう

美しいという言葉も
華やかなものも

この手にはないのに



末摘花



夜に耐える
想う人の背中が霞んでいく

人を射抜くような
あの、優しい笑い方も




末摘花



見上げる月に花の匂い

待つ苦しさはひしひしと
独りでに歌

あるいは千年も前の心象と同じもの



末摘花


何度泣いた?

ひとの気持ちは変わらずに愚かだ




末摘花


同じ夢を見てしまったのかもしれない

肌を撫でれば美しくもなく




末摘花


いっそもう

何もなかったように
忘れてしまえと



末摘花


絵巻の中の女に思う





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